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2008年:血管周皮腫切除に超音波凝固切開装置を用いた犬の1例 (第17回 中部小動物臨床研究発表会)

〈要約〉
12才令の雑種犬が右上腕内側から脇下に達する巨大な腫瘤が自潰したとのことで来院。肩甲部よりの断脚をすすめたが、オーナーの希望により前肢を保存し腫瘤部の切除を行った。切除には超音波凝固切開装置を多用した。広範囲の切除ではあったが、術創は順調に治癒した。しかしながら、病理組織検査の結果、切除腫瘤は血管周皮腫であり、切除マージンの問題を含め再発のリスクを多く残す結果となった。

Key words:犬、血管周皮腫、超音波凝固切開装置

血管周皮腫は犬によく認められる腫瘍のひとつであり、和名では血管周囲細胞腫、紡錘細胞肉腫、血管外皮腫などと呼ばれることがある。四肢に発生することが多く、多発浸潤性に発生することもあるが、他の軟部組織肉腫(以下:STS)と同様に転移率は低いといわれている。病理組織学的には未分化な間葉系細胞であるため、一般的な良性、悪性の分類基準に当てはめることができないが、他のSTS同様再発しやすく、再発を繰り返す場合には増殖速度の増加などの臨床的な悪性化が見られることがある。治療は十分なマージンを確保した外科的な切除であり、腫瘍のコントロールと延命には放射線療法が効果的な場合があるが、有効な化学療法は報告されていない。
今回、外観上の侵襲度から前肢を保存すること自体が困難と思われたが、オーナーの意向で前肢を保存する形で腫瘤のみの切除を行った。広範囲の切除であったが、超音波凝固切開装置(オリンパスメディカルシステムズ株式会社、SonoSurg:以下SonoSurg)を用いることによって比較的少ない出血で手術を終えることができ、また手術時間の短縮も得られた。術後は治癒不全、歩行異常等もなく、約5ヶ月という短期間の観察ではあるが良好に経過しているので、その概要を報告する。